恋するほど   熱くなる

『バリアー』はトップだった。

元々トップを維持していた彼らは増々他のアーティストを寄せ付けない不動のものとなった。

続けて出した二作目のシングル共々一位、二位を独占した。

卓巳の歌う曲に載って私の詩が聴いている女の中にこぼれる時

その女体は甘く痺れて解き放された。

「信じられない。美莉の詩がこんな歌になるなんて。」

と荒木さんが言った。

香織さん曰く「女はいつでもこういうのを求めているのよ。男には理解できないことね。」

私は荒木さんに内緒で須山さんに会った日以来

荒木さんの胸の内がどんなに辛いものなのかをいつも案じた。

荒木さんは今でも苦しんでいるのかしら?

私がじっと彼を見つめていたので変に思われたらしい。

「美莉、どうした?何か悩みでもある?」

「別に何でもないです。」

「最近、変だよ。物思いにふけるのをよく見る。」

香織さん曰く「美莉ちゃんも恋する乙女心ってとこかしら?」

私が恋をしているですって?

香織さん鋭いかも。

「私、恋なんてしてません。」

「そうよね。いつも誰かさんにバッチリ見張られていたんじゃ、おちおち恋もできないわよね。」

「香織、それ僕のこと?」

「あ~ら、失礼。美莉ちゃんも恋の一つや二つ、さらりと通っていきたいものよ。女はいくつも恋をするの。男と違ってね。」

私は香織さんの言う通りだと思った。

そして卓巳の言葉を思い出した。

「美莉のヴァージン、僕が欲しいって言ったらどうする?僕が君をメチャクチャにしてやりたいって言ったらどうする?」

彼の言葉にそそられた。

処女の私にとって、あんな風に言われただけでおかしくなりそうだ。

全身が震えてしまう。

私にはまだその方面に免疫力が無いのだ。

そう考えていたらまたヘビィなフレーズが浮かんでしまいそうだ。

「美莉、バリアーのリーダーには気をつけろよ。彼に泣かされた女は数え切れないほどいるらしい。」

「へぇ、そんなに男前なの?そのリーダーって?」

「香織、美莉に余計なことを吹き込むなよ。」