私は須山さんと約束の時間にスタジオで会った。

「荒木のことをなぜ俺に聞くんだ?」

「女の勘です。」

「ほう、君は荒木が好きなのか?」

「はい、彼はいつだって私の支えになってくれるんです。」

「君のマネージャーだからだろ?当然だ。」

「沙良さんて、どんな方なんですか?ネットで彼女を見たんです。アメリカで大成功してます。彼女がプロデュースしたCDを買ったんです。」

「沙良は女じゃない。アイツはいつも強気で俺の手に余った。荒木は彼女にぞっこんだった。だが沙良は荒木じゃなく俺を選んだ。」

「そうだったんですか。」

「だがその彼女もついに俺を捨てて渡米しちまった。恋愛より仕事を選んだわけだ。いずれは帰国するだろう。その時たぶん俺には会いに来ない。そういう女だ。」

「沙良さんは荒木さんのことを忘れてしまったのかしら?」

「アイツが荒木のことなど気にするわけがない。ところで曲が完成したんだ。時間があるなら聴いていくか?もうじきメンバーが戻ってくる。」

「はい。」