「美莉、須山が君の詩全てに目を通した。」

「そうですか。ありがとうございます。」

私は須山さんに頭を下げた。

「荒木の事務所は前と住所は同じか?」

「ああ。」

「じゃ、契約書を渡しておこう。一部を返送してくれ。契約期間は無期限だ。」

「無期限?」

荒木さんは須山さんの言葉に驚いていた。

「そうだ。彼らが歌を辞めるまでってことだ。」

「ウソだろ?そんな契約はできない。」

「こっちは本気だ。途中でよそに引き抜かれるかもしれないし契約なんて形式だけだ。それにこの業界では何が確かで何がそうでないか今日と明日では全然違うんだ。荒木、おまえの業界とは違うんだ。昨日までトップだったが今日から誰も目もくれない。それがこっちの世界だ。」

「須山さん、バリアーは生き残れるの?」

「いい質問だな。荒木よりずっと賢いぜ。女は強いんだ。沙良もそうだった。」

「沙良さん?どなたですか?」

「荒木に聞けばいい。バリアーには俺がついている。常にトップさ。そして美莉の詩でそれが不動のものとなる。」