僕は旧友であり悪友である須山に会った。

「よお、荒木。その後変わりない?」

「沙良は元気?」

「おまえ、何年振りかで会った俺より、第一声が沙良のことかよ。」

「彼女はどうしてる?」

「俺を捨ててアメリカへ行っちまったよ。」

「何だって?」

「荒木、沙良のことはもう忘れろって。俺がいい女を紹介してやるから。」

「須山、おまえ彼女に何したんだ?」

「別に何も。アイツが勝手に一人で決めたことだ。俺はノータッチだ。」

「そうか。」

「音楽プロデューサーになるんだ、向こうで修行を積んでくるんだとわめいていたぜ。」

「・・・・・」

僕は以前想いを寄せていた沙良のことが気になった。

「ところでメールの件だろ?俺に見せてみろよ、その詩。」

「これなんだが僕じゃ手に負えなくて、須山なら良し悪しわかると思っておまえの意見を聞きたいんだ。」

「ふん、俺の意見?高いぜ。」

「いいから読んでみてくれないか?」

「どれどれ、はあ~ん、この詩、誰が書いたんだ?」

「どうなんだ?」

「新人か?」

「だから使えそうなのか?」

「荒木、おまえこっちの業界じゃ一曲売れただけで一生飯食っていけるんだぜ。もしこの詩に曲がついて売れたらどうなるか、おまえわかって言ってんの?」