私は彼をじっと見つめた。

「何?まだ何かある?」

「いいえ。」

「じゃ、仕事の話に入るよ。関根先生から君へ仕事の依頼が一件ある。聞いて驚くなよ。先生のリサイタルが九月に開かれる。つまりスクールの発表会みたいなものだ。クラス別にプログラムがあるらしい。先生だけのものも最後にある。君をそのパートナーにとオファーしてきた。踊れる?たぶんバレエだ。ダンスではないと言っていた。」

「関根先生のパートナーを務めるの?私が?」

「返事はどうする?やるのか、やらないのか?」

「私、やります。やらせてください。」

「オーケー、あとでメールしておこう。先生もきっと喜ぶよ。これは仕事だからな。もちろん報酬が入る。プロのモデルから、プロのダンサーになってしまったよ。僕にも予想できなかったことだ。」

彼はすぐに先生へ返信のメールを打った。

私はその様子をじっと見ていた。

荒木さんはいつも私のそばにいた。

近すぎて今までゆっくり観察する機会がなかったのだ。