恋するほど   熱くなる

シーナ先生の取り計らいで

私はアランとロイヤル・バレエ団のスタジオで踊りを披露した。

私もアランも真剣だった。

仕上がりは最終段階で二週間後には東京公演が控えていた。

スタジオにはシーナ先生の教え子達が

アランと私の踊りを鋭く観察していた。

音楽はなく、ただ二人の足音だけが響いた。

その場にいたダンサー達は皆息を殺して私達を見つめた。

アランは私の持つ技量以上のものを引きずり出した。

汗が流れてお互いにどちらの汗だがわからないほど絡み合い

際どいヒーンもすれすれに惹きつけた。

「美莉、アラン、パーフェクトよ。素晴らしいわ。美莉の表現力に震えたわ。アラン、美莉は今までの誰にも比較できないくらいの最高のパートナーだわ。」

シーナ先生は私のことを日本のトップソリストだと教え子達に紹介した。

もちろん彼らはアランのことは知っていた。

「美莉、今日の君は最高だった。私がもっと早く君を目覚めさせるべきだった。」

「アラン、ありがとう。最高のほめ言葉だわ。とっても嬉しい。」

シーナ先生は私とアランを抱きしめた。

彼女は私達をディナーへ招待してくれた。

私は一度ホテルへ戻った。

一方荒木さんは関根先生と叔母宛てに

アランと踊る私を観てもらいたいと東京公演のチケットを二人に送ったらしい。

メールが届いた。

皆が私を見守ってくれていることに感謝の思いでいっぱいだった。

卓巳は観に来てくれるかしら?

彼に会いたかった。

彼の腕に抱かれたかった。

彼に強く抱きしめられたかった。

卓巳の温もりが恋しかった。

彼はいつだって私の中にいると言ってくれたわ。

昨年のクリスマス・ライブの前に会ったきりもう四ヶ月も経っていた。

二月にロンドンに来る前

アルバムのことでスタジオで会ったけれど

二人だけではなかったし

ろくに話もできなかった。

早く彼に会いたかった。

私は公演を必ず成功させると誓った。

自分で自分に誓った。

明日は公演のメンバー全員が日本へ向かう。