僕は、医師から美緒さんに視線を移した。

「美緒さん…僕の?」

そんな問いかけをすると、美緒さんは静かに頷いた。


「先生・・・赤ちゃん、まだ、私のお腹にいるんですか?」

「ええ、出血がありましたから、どうかと思ったんですが、

まだしっかりお腹の中で頑張ってますよ。切迫流産しかかっている状態ですから、

このまま入院していただかねばなりませんが・・・」


「先生、ありがとうございました」

美緒さんはまた泣き出してしまった。


「面会時間は、10時までですからね。

…今はゆっくり、奥様の傍にいてあげてください」

そう言って医師は、病室を出ていった。


…静かになった病室の中。

相変わらず二人の手は握りしめられたまま、

言葉を発する事はなかった。


なんだか胸が一杯で。

・・・でも時間と共に、もっと早く、僕の妊娠の事を言いてほしかった。

その気持ちも大きくなっていった。


「美緒さん、何でもかんでも、独りで背負わないでください」