橋の向こうをじっと見てると、凪原が不思議そうに顔色をうかがってくる。 「あ、…なんでもない」 俺は曖昧に微笑んで、階段を登った。 眼前に佇むのは、美しい桜の樹。 改めてじっくり見ると、幹が結構大きい。 俺の肩幅の2、3倍くらいだろうか。 枝も天に向かって力強く伸ばしており、これ自体が一種の生き物に見える。