薄桃色一面に染まる山々を見上げてから、俺は自分の手のひらを見た。


あの日霞を殺した俺の手には、まだ人を刺した感触が色濃く残ってる。


柔らかい肉を裂く鋭利な刃物も、そこから流れる温かい血の匂いも、全部覚えてる。

無意識に手のひらに爪を立てると、凪原がその手にそっと手を添えてきた。


「っ?」

「北見が気に病むことはないんだよ」