霞が歩き出した。


幸助さんに向かって、一歩一歩踏みしめるように。


「……………あ」

けれどやはり、霞は彼の一歩手前で立ち止まってしまった。


この人は、とても優しいんだ。

だから、…………でも。


「あのさ…これ」

俺はジャージのポケットから、彼女の部屋にあったかんざしを取り出した。

「……これ、大切なものなんだろ?だから、ほら」