“『かづき…霞月か。綺麗な名前だ。
でもそれは他所から来た名前だろう?…そうだね……』”


“幸助さんは考え込むように腕を組み、やがて何かを思い付いたようにポンと手を叩いた。”


“『霞。君の名前は今日から霞にしよう。野草の一種でね、後々教えてあげよう』”

“『後々?』”

“『そうだよ。君はこの村の住人なのだから』”


“幸助さんは私の手を取り立ち上がらせると、にこりと微笑んだ。”


“嬉しかった。”

“この村に私の居場所などなく、死ぬまで、いや死んでもずっと一人だと思っていたのに。”

“私に手を差し伸べてくれる人がいる。”

“笑顔を向けてくれる人がいる。”