“褒め称えられるほどの事をした覚えはなくて、居たたまれなくて顔をそらすと幸助さんがわざわざ膝を折り視線を合わせてくれる。”

“彼は私に手を差しのべた。”


“『私は桜坂幸助。幸助でかまわない。君の名前は?』”


“私の…なまえ…。”


“『……霞月、です』”

“しばらく誰にも呼んでもらえなかったから、一瞬忘れかけてしまった。”


“いや違う。”

“私が誰にも教えてなかったのだ。”