手を開いてみるとそれは初々しい桜の花弁だった。 見事な薄桃色のそれは、吹いた風に流されていく。 ポカンとしながら前を向くと、俺は目を見張った。 桜の樹がそこにあった。 夏場だというのに大輪の桜の花を咲かせている。 ………ありえない。 狂い咲きだとしても、ここまで立派に咲くなんて…。 俺は今見てる光景が、現実のものとは思えなくてただ呆然と突っ立っていた。 それほどまで、美しくどこか不気味だ。