この愛に抱かれて

響子は6歳のころから包丁を握っていたのだ。

野菜の皮むき程度なら目を瞑ったって出来るほどだった。


牧村道子に鍛えられ、知らず知らずのうちに腕は一流なほどになっていた。



「驚いたね」

房江は驚嘆の声を上げた。


「あんた、料理屋にいたのかい?」


「いえ・・・。子供のころ覚えたんです」


「そうかい・・・。なら、それを教えてくれた人に感謝しなきゃねぇ」


「え?」


「あんた、うちの料亭で働かないかい?」


「私が?・・・」


「ああ、この板場でさ」


房江の誘いに響子は満面の笑みで答えた。



牧村響子の新たな一歩がスタートした。