「泣いてなんかないよ。バカ」


「バカはマユだよ。

その鼻声・・・ばれてるよ」

そう、言ってリョウが後ろから抱きしめてきた。


リョウに肩を抱かれると途端に切なくなってしまって、涙が止まらない。


しゃくり上げるように泣く、マユの肩を抱きながらリョウはゴソゴソとズボンのポケットをまさぐっている。


「ほらっこれ」

ポイと机の上に投げ出されたものは、マユが買ってきた旅行切符と同じものであった。


何故、同じ切符があるのか理解できなくて、切符とリョウの顔を交互に見つめる。


「俺、マユの事旅行に誘うのにどれだけ考えたと思ってるんだよ・・・。

気障な科白もめいっぱい考えて・・・この俺がだぜ。

それをマユったら、あっけらかーんと『行こうね』

なんて切符出すからさぁ、男としちゃあやりきれんでしょ、やっぱ・・・」



あぁ、リョウも同じことを考えてくれてたんだ。

嫌われていた訳じゃ、なかったんだ!


そう思うとマユは包み込まれるような暖かい気持ちになった。


小さな子どものように泣き笑いのまま、リョウの胸に顔を埋める。


『ダブってしまった切符はどうしよう?』そんなことが脳裏に浮かんだが・・


それは

  明日考えることにしよう・・・。


おわり