そうか俺が誰かわからないんだ!

「えーと、俺今日からバイトすることになりました岸森海人です」

緊張・・・・。
声震えてねーかなぁ?

「あっ!モデルの桜井惟知嘉です。
これからよろしくね、海斗くん」

感激だ・・・・

桜井惟知嘉が俺の名前を呼んだ。
しかも下の名前で君付け。

生きててよかったー。

あっ!返事返事。

「はい!よろしくっす」

変な風になった。

「惟知嘉ちゃーん はじめるよー」

えらそうなじじぃが言った。

それから俺はモデルのすごさを目の前で感じた。

さっきまでとは全然違う。
一瞬にして空気が変わった。

モデルってすごい。
1日に何回も服を変えて、ずっと笑顔で顔が疲れないのかって本気で思った。

たった1ページでも、何枚も何枚も写真を撮る。

朝から夕方くらいまで撮影は続いた。

家に帰ってすぐ俺は友達の篠崎に電話した。

プルルルルル プルルル・・・

『はいはーい。海斗くーんどーした?』

「ヤバい。俺のバイト先めっちゃヤバい」
焦ってて主語があいまいで相手は理解してない。

俺が悪い。

『何が???とにかく落ち着け。ヤクザとかか?』

「違う。バイト先、雑誌の撮影現場だったんだよ!!!」

『マジかよ!!!!!何の雑誌??」

こっちの興奮もあっちの興奮もすごかった。

「apple」

『appleってあのapple?まさか桜井惟知嘉の!?』