結局その夜、その娘は自分の素性を一言もしゃべらずじまいで。
「山田沙希、17歳、高校二年。昨日、両親から捜索願が出されてる」
翌朝、坂田からの電話で俺はその娘の素性を知った。
昨晩は美亜と一緒に寝て、朝も普通に起きて、今目の前で朝食を取ってる娘。
食欲はあるようだ。
顔色も良い。
きっと昨晩はぐっすり眠れたに違いない。
「おい、沙希、両親から捜索願い、出てるってさ」
彼女は俺の問いかけにビクリと身体を強張らせた。
「ビンゴ! 坂田、間違いない。こいつは山田沙希だ」
その後、坂田から今後の手続きについて説明を受けた。
当人が家に連絡を入れて居場所を伝えれば、それはそれでよし。
両親に捜索願を取り下げてもらって、話し合いが持てれば事態は解決に向かうのだが。
もしそれが叶わない場合、つまり彼女が保護を拒否して逃げ出す可能性ありの場合。
「お前、どうする?」
坂田の声が慎重に響いた。
美亜の時のこともある。
ゴタゴタはゴメンだ。