それでも、あんなにあからさまに拒絶されたことなどなかった。
褒められはしなくとも、いつか、いつか沙希が人に誇れるような自信がついた時、母は自分に目を向けてくれる。
心の底で、そう信じていたのだ。
「あたしはいらない子」
そう確信した時、沙希は何故かほっとしている自分に気付いた。
なんだ、やっぱり。
今までの謎が一気に晴れた、そんな気持ちだった。
と、同時に、自分が人間で無くなったと感じた瞬間でもあった。
「あたしだって、生まれて来たくなんてなかったよ」
もうこの家には居られない、と沙希は半ば彷徨うように家を出た。
着の身着のまま、何処をどう歩いたのか。
人間じゃない自分が、何処でどう生きて行けば良いのか皆目見当がつかぬまま、ただ歩き続けた。
歩いても、歩いても、目的地は見えない。