【俺が愛莉を守る】
愛莉をもう泣かせない。
そう、勝手に心に決めたんだ。
「蓮?怒ってるの?」
不意に愛莉に覗き込まれた俺は、マヌケな事に赤くなってしまったのだ。
「ばっ、馬鹿!!お前急に顔を……」
「良かった。怒ってないんだ」
どこまでも鈍感な女。
俺は一つため息を漏らすと、
「別に怒ってね―よ」
と、相変わらずの憎まれ口をたたいた。
やっぱり、素直じゃないな。
「今日は色々ありがとね。蓮が助けてくれて、本当に嬉しかった」
「あのな、もっと自分の体を大切にしろ!!マジで、心臓が飛び出るかと思ったんだからな」
あんな光景、絶対にもう見たく無かった。
一瞬にして頭が真っ白くなって、気が付いたらどこにも繋がっていない電話に向かって、必死に通報しているフリをしていた。
相手が凶器を持っていなかったから良かったものの、そうじゃなかったら今頃は……
考えただけでも鳥肌がたつ。