少し時間が経ち、あまり居ないと心配させてしまうので海の家の方に帰ってきた。
海の家の傍に来ると
「愛莉ちゃん、少し考えてみてね」
翔君はそう言うと、グイッと私の手を引っ張り額にキスをした。
何も出来ずに、ただ頷くのか精一杯で居る私。
その場で別れて、私は店長と沙織さんに挨拶をしに店内に入って行った。
「お疲れ様です」
店内には店長と沙織さんが居た。
悪い事はしていないものの、飛び出して行った手前、少し気まずくて小さな声で挨拶をすると頭を下げてみる。
「あれっ?愛莉ちゃん、どこに行っていたの?姿が見えないから、てっきり帰っちゃったのかと思ったわよ」
沙織さんは、相変わらず優しそうな笑顔で私を見ると、再びレジを開けながら売上を確認し始めた。
そっか、私が飛び出して行ったのを気付いて居なかったんだ。
少しだけホッと肩をなで下ろした。
「すみません。あの、彩乃は…」
すると、店長はコーヒーを飲みながら
「なんか、愛莉ちゃんを待ってたみたいだけど、見当たらないから彼氏さんと帰っちゃったよ」
「ありがとうございます」
そうだよね。
帰ったら電話してみなきゃだな。
私は更衣室に有る荷物を取ると、『お疲れ様です』と挨拶をし、海の家を後にした。

