そんな私を見た蓮は、ハァ~と面倒臭そうにため息をつきながら
「お前…バカか?
手に包帯巻いて居る奴が、どうやって水仕事するつもりだよ。少しは頭使え。
そんなんだから、昼間みたいな男に絡まれるんだよ」
ヒドい。
ヒド過ぎるよ。
なにも、そこまで言わなくても……
前言撤回!!!
優しくも何とも無いです。
ちょっとでも見直した私がバカでした。
「そんな風に言わなくても良いじゃない。昼間の事、すごい嬉しかったのに……蓮のバカッ!!!」
売り言葉に買い言葉。
蓮にそう叫ぶと、私は洗い場から走り去って行った。
気が付いたら、砂浜を走っている私。
こういう時に、海がすぐ傍で良かったと思う。
少し立ち止まると、涙が出そうになる。
近くに大きな流木を見つけると、私はゆっくりとそこに腰をかけた。
ギュッと体育座りのまま膝を抱えると、顔をうずめる。
涙の音だけが聞こえてきて、少しだけ心を落ち着かせてくれた。
「……分かってるわよ」
ボソッと出てきた言葉。
そう、分かっているんだ。
自分があんな男に騙されて居たのも、惨めな姿なのも…全部全部分かっているよ。
ゆっくり顔を上げると、1羽の海鳥が目に入ってきた。

