「……ヤバッ…何にも見てなかった」
蓮の背中を見ながら、思わず口から出てしまった一言。
ああやって啖呵を切ったけど、出来る自信なんて無かった。
でも、今更あいつに謝るのはシャクだから絶対にイヤだったのだ。
半分ため息混じりにパラソルを見つめると、渋々作業を始めた。
きっと、どうにかなるはず……
なんて軽い気持ちで考えていたけど、思いのほか体力を奪っていく真夏の日差しは、ジリジリと私の体を照りつけている。
マジ辞めたい。
こんなに辛い思いしなくても、きっと沢山バイトなんか有るはずだよ。
なんで、バイト初日でこんな思いしなきゃならないのか全く理解出来なかったし、会ったばかりの蓮にこんなにも嫌われる理由が分からなかった。
焼け付く様な暑さの中、半分意識が遠のいて行く。
水飲みたいな……
でも、お店に戻ったらまた蓮にイヤミを言われちゃうし。
そんな事を考えながら、フッと目の前が真っ白くなっていった。

