「おかしいなぁと思ったんだよねー。

西山くんには星華ちゃんっていう可愛い婚約者がいるのに、どうして私なんかをパートナーに誘うのかなぁって」


「……それについては説明しましたよね?彼女には副委員長の仕事があって、」



俺が再び説明しようと口を開くと、不意に長谷川が俺の方へと両手を伸ばしてきた。


そしてそのまま――俺の両頬をつまみ、ビヨーンと横に伸ばす。



「…………」


「ほらやっぱり。――その話をする時の西山くん、思いっきり頬が引きつってるんだよねー」



ついでに、おでこには『不本意』って書いてあるよ――そう言いながら、俺から手を放して長谷川は笑った。


その笑顔は、まるで悪戯が成功した時の無邪気な子供のようで。



「はぁ。……僕もまだまだですねぇ、そんなに分かりやすい顔をしているなんて」


「いやいや、正直に生きてた方がいいと思いますけどねー私は。

むしろ、笑顔維持しててほっぺたの筋肉とか疲れません?大丈夫?」


「……気にするとこはそこなんですか?」


「当然でしょう!ほっぺたの筋肉がつったら痛そうじゃないですか!!

……って、話はそこじゃないでしょう!?」


「いや、話を横道に逸らしたのは貴方なんですが……」



すっかり毒気を抜かれた俺は、しばらく雑談を交えながら

星華についての相談に乗ってもらうのだった。