そもそも俺は、星華の婚約者としてあいつをパートナーへ誘おうと思って彼女の部屋を訪れた。
けれど、いざ誘おうとした矢先に彼女のもとへ舞い込んできたのは副委員長としての仕事。
されてもいないパートナーの誘いと、頼まれたという副委員長の仕事
――どちらを優先させるべきか、なんて明白なはずだ。
それなのに、星華の選択を聞いて嫌な気持ちになったのは――
(星華へ伝えに来たのが妙に気にくわねぇあの仏頂面だったからか、
それとも……星華が俺よりも仏頂面(あいつ)を選んだように聞こえたからか)
俺はそう考え、ふと笑みをこぼした。
いったい何を考えてるんだ俺は。それじゃまるで、俺が嫉妬してるみたいじゃ――
「……ん、西山くん?」
「え?……あ、すみません長谷川さん。なんでしょう」
「いえ、なんでもないんですけど……なんだか少し苦しそうな顔をしてたので気になって。
バルコニーにでも出て風に当たります?」
「あぁ、それはいいですね。行きましょうか」
隣を歩く長谷川さんの声で我に返った俺は、今がパーティーの最中だったことを思い出し、
すぐに顔へ笑顔を張り付けた。
そのまま、彼女の提案通りバルコニーの方へ向かう。