気を取り直して大和撫子スマイルを浮かべていると、不法侵入者は



「まぁそう睨むなって」



と言ってニヤリと笑った。


別に睨んでいませんよ。ケッ。



「……それで、なんの御用ですか?」


「あ?用がなきゃ来ちゃいけねぇのか?」


「(いけないに決まってんだろうが!)……ご用件は?」



ツッコミを必死で飲み込みつつ笑顔で促せば、敬太様は少し不満そうに唇を尖らせた。


ふはははは、いつまでもお前の挑発に乗る私だと思うなよ!


心の中で密かにガッツポーズしつつ、私は敬太様を部屋の中へ招き入れる。


当然のように部屋の椅子へと腰掛けた敬太様は、

正面の椅子へ私が座るのを待ってから静かに口を開いた。


そして次の瞬間……敬太様の口から飛び出したその言葉に、私は絶句する事となる。



「その……悪かったな。星華の言葉を信じなくて」


「――ッ!?」


「お前だって子供じゃないんだし、体調がどうかなんて自分で分かるよな。

それなのに俺は……って、なんだよその溶けたチョコみたいな顔は」


「あぁ……鞄の中で溶けると大惨事ですわよね……」



私は敬太様の言葉を聞き流しながら、フラリと椅子から立ち上がった。


そして、怪訝そうに眉を寄せる彼の額にゆっくりと手を伸ばす。



「熱はなさそうですわね。……という事は、もしかして本気で謝ってらっしゃるのですか?」


「あぁ、もちろん……ってなんでそんなに怖がってるんだよ!?」


「す、素直に自分の非を認めて謝るなんて……そんなの敬太様じゃないですわ!」


「残念ながら本物の西山敬太だよ悪かったな!っつーか星華の中で俺は一体どんなヤツなんだよ!?」


「粘着質で俺様な上に人の話を聞かないエセ王子」


「予想を遥かに超えた低評価!しかも真顔で言い切られたし!!

一体俺が何をしたっていうんだ!?」



混乱した敬太様がツッコミを入れてきているが、そんなの知ったこっちゃない!

こっちは『敬太様が謝ってきた』という事実に驚くので忙しいんだよ!!