「す、すみません……。ありがとうございます」



ちょうど咳のし過ぎで喉が痛くなっていた私は、ありがたくそれを受け取るとすぐに口に含んだ。


そのままカラコロと口の中で飴を転がしていると、



「……七宝院。もしも無理そうなら、今のうちにバスを降りるべきだと思うが」



菅原様はそう言って眉間にシワを寄せた。


その表情は一見とても不機嫌なように見えるけれど、

どうやらただ単純に私の体調を心配してくれているだけのようだ。



「い、いえ、本当に大丈夫ですわ」


「……熱とかは。ないのか?」


「今朝家で測ってまいりましたが、平熱でしたわ」


「…………ほう」



私の言葉に不信そうな表情をする菅原様。


だが、これはいたって事実である。


そもそも、熱とか出してたら家から出してもらえなかっただろうしね。


……っていうか菅原様、そんなに何回も確認せんでいーわ!別に嘘はついてませんから!!


心配してくれてるのは分かるしそれはとっても有難いんだけど、

ここで折れてオリエンテーション合宿に参加できないとか嫌だもんね!


『天シン』のいちファンとして、

『ドレスアップした敬太様と真凛ちゃんがバルコニーで見つめあう図』

だけは絶対に見ておきたいんだよー!!