ヒクつくこめかみを押さえながら、俺は軍服(コスプレ衣装)を着て

執務室の机にふんぞり返る親父を見つめる。



――西山圭一(ニシヤマ ケイイチ)。



祖父の立ち上げた会社をさらに発展させ、

国内規模から世界規模にまで会社を広げたとても優秀な人物だ。


――ただし、プライベートは想像を絶するちゃらんぽらんっぷりなのだが。



「……じゃ、ねぇよ!おい親父、その『婚約者』とやらのデータはどこだ?

それを渡すために俺を呼んだんだろ?」


「確かにそれもあるけど、本題は違うよ?」


「……え、そうなのか?」


「うん!本題はもちろん、僕の軍服姿の感想をもらうため……って痛い痛い!

髪の毛は引っ張らないでぇー!!」


「年甲斐もなく金色のカツラなんて付けてる親父に言う感想なんてねぇよ!」


「ひ、ひどい!これはカツラじゃなくてウィッグだよー!!」


「どうでもいいわ!っつーかさっさとデータ渡しやがれ!」



俺は涙目でウィッグを押さえる親父から数枚のプリントを受け取りながら、

ちょっと泣きたい気分になった。


……俺は、何が悲しくてコスプレ親父なんかにツッコミを入れねばならんのだろうか。


しかも無駄に似合ってるからまた腹が立つ!


まぁ、仕事の時の親父とプライベート時の親父を知っているからこそ、

そのスイッチの切り替え方や人当たりのいい性格などを学べたともいえるのだが。