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「……ダメですわね。また思い出していましたわ」



濡れた髪をバスタオルで拭いていた私は、

いつの間にか前世の記憶を思い出していたことに気付いて溜息をついた。


とっくに湯冷めしてしまったらしい冷たい身体を自分で抱きしめつつ、

私は再び手を動かし始める。



――あの後。



『お母さん』と共に学校へ行く途中、

私は居眠り運転のトラックに運悪く轢かれ、死んでしまった。


最後に目に焼き付いているのは、狼狽えた表情でこちらへ手を伸ばすお母さんの姿。



「……ごめんなさい」



思い出した私は、重い溜息をつきながら小さな声で前世の母に謝った。


……そしてふと、自分の気持ちが暗く沈んできている事に気付く。