私だって、伊達に小さな頃から社交界に出ているわけではない。これでも人の表情を読むのは結構得意だったりする。


その結果、彼から感じたのは――不安だった。



(学級委員長になりたい。けれど、自分にクラスメイトがまとめられるかどうか自信がない……ってところかな)



そう思った私は、菅原様を応援すべく彼に声をかけた。


さっき気遣ってもらったお礼も兼ねて、いっちょ『おだてて自信をつけちゃうぞ作戦』をやってみますか!



「菅原様。もし迷っていらっしゃるなら、学級委員長などいかがですか?」


「……は?」



パッと顔を上げた菅原様は、戸惑ったようにこちらを見つめた。


しかし、その瞳は期待でキラキラと輝いている。



「いかがでしょう?菅原様はとても真面目な性格のようですし、その上細やかな気遣いができる方だと思いましたのでオススメしてみたのですが」


「いや……しかし、俺なんかに委員長など務まるかどうか」


「『俺なんか』と自分を卑下してはいけませんわ」



私は菅原様をまっすぐ見つめ返すと、しっかりと頷いた。



「少なくとも、私は菅原様が適任だと考えておりますよ?」


「そ……そうか」


私の言葉に、仏頂面のまま菅原様。


しかし少しだけ口元が緩んでいるあたり、恐らくとても喜んでいるのだろう。