「あ、ありがとうございます敬太様……」


「謝らないで?俺こそ、星華のこと一人にしちゃってごめんね」


「いえ、大丈夫ですわ。それより……」



どうして突然不機嫌になったんですか?――とストレートに聞こうとした私は、

一つの可能性に気付いて咄嗟に口を閉じた。



(もしかして敬太様、私が親切さんと並んで話してたのに嫉妬したとか……?)



俺様を通り越して暴君な敬太様のことだ。


遊びがいのありそうなオモチャ(つまり私)が他の人と話しているのを見てイラついたのかもしれない。



(もし予想が当たってたら『心の狭いヤツめ』って思うけど、

あながち間違っていなさそうなのが問題だよね……)



私は小さく溜息をつくと、親切さんにお礼を言って敬太様と共にその場を離れた。


なんとなーく、敬太様と親切さんが同じ場所にいたらヤバい気がしたのだ。



(ふっ、これが女のカンってやつか……!)



敬太様の少し後ろを歩く私は、そんな事を考えながらぼんやりと敬太様の背中を見つめる。


すると、不意に振り向いた敬太様が王子様モードのままこちらに問いかけてきた。



「ねぇ、星華。さっきの男は誰なの?」



無邪気を装うその瞳の奥には、なにやら不穏な色が浮かんでいる。



(嘘をついたら承知しねぇぜ、って事か……!)



その意味を正しく理解した私は、小さく息を吸い込んだ。