「きゃっ!?」


「星華、残念。俺たちは別のクラスだったよ」



驚いて振り返ろうとした瞬間、サラリとした茶色の髪が頬を撫でる。


その髪を見て誰が抱き着いてきたのか察した私は、同時に囁かれた甘い声に思わず涙目になった。



「や、やめてくださいませ敬太様……!(訳:離れてください気持ち悪い!!)」


「ふふっ、慌ててる星華も可愛いね(訳:面白いからヤダ)」



視線を上げれば、こちらを見つめる敬太様と目が合った。


その整った顔に張り付いているのは、寒気をおぼえるような黒い笑顔。


声だけが優しいエセ王子モードとか、無駄に器用だなこの人……じゃなくて。



「お、お願いします……っ!」



私は恥ずかしさで真っ赤になった顔を両手で隠した。


前世(彼氏0)でも現世(箱入り娘)でも男性とあまり触れ合った経験の少ない私にとって、

後ろから抱きしめられるなんて刺激が強すぎるのだ。


そう考えながら、耳元で響く甘い笑い声に思わずギュッと目をつぶったその時……。



「……離してやれ」



そんな言葉と共に右手の手首を掴まれ、ぐいっと前に引き寄せられた。


私の身体はいとも容易く敬太様の腕から離れ、そのままポスリと前の壁にぶつかる。


……って、ポスリ?