二人きりの時は敬太様も私も被っていた猫を放り出して話すので、
猫を被った状態で話すとどうにも違和感を感じてしまう。
ふぅ……と息をついて俯きがちだった顔を上げれば、
こちらを見ていたらしい数人の男子が一斉に目を逸らしたのがわかった。
それに気付いた私は、なんだか居心地が悪くなって再び足元に視線を落とす。
――自分で言うのもどうかと思うけど、私は見た目だけなら大和撫子そのものだ。
背中まで流れた黒い髪と、垂れ気味の黒い瞳。そして抜けるように白い肌。
少女漫画の重要キャラなだけあって、容姿については非常に恵まれているのである。
だから、人より少し目立つのは仕方ないとは思うんだけど。
「……なぁ、あんた」
こうやって話しかけてくる人が多いのは、本当に困る。