見つめあうフリをしてバチバチと火花を散らしあっていると、
「あ、あのっ!」
という控え目な声がかけられた。
「はい?」
その声でやっと他の人がいた事に気付いた私は、返事をしながら敬太様から視線を逸らして振り向く。
そして――思わず、言葉を失った。
「ぶ、ぶつかっちゃってすみませんでした……!」
そう言って頭を下げるのは、色素の薄い長めの髪をポニーテールにまとめた女の子。
ウルウルと潤む黒い瞳。
柔らかそうなピンク色の唇。
(う、嘘でしょ……!?)
そこに立っていたのは、『天シン』のヒロインにして無自覚系な天然美少女
――長谷川真凛その人だった。
と、その姿を見てハタと思い出す。
(そうか、今のぶつかってきたのは出会いイベントだったのか!!)


