あーあ……これが一段落したら、この苦労話を小説として書いてやろうかな。


『前世の記憶がある』なんて誰も信じないだろうから、

ある程度ノンフィクションで書いてもあんまりバレない気がするし。



(そうなったら、題名はどうしよう?

『婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です』

みたいな感じ?たくさんの人に読んでもらって、人気作家とかになっちゃったらどうしよー!)



私が馬鹿な事を考えて現実逃避していると、不意に敬太様がこちらを振り向いた。



「なぁ、星華。お前って、見た目だけなら完璧な大和撫子だよな」


「……ありがとうございます」



そのセリフ、そっくりそのままお返ししてやるよこのエセ王子!喧嘩売ってんのかコラァ!

と叫びそうになった自分を抑え、なんとか口を開く。


すると、敬太様は不思議そうな表情で首を傾げた。



「でもさぁ、おかしいんだよなぁ……。俺とお前はパーティー以外ではあまり会ったことがないはずだし、パーティーの時の俺は行儀よく振舞っているはずなんだ。

ならいつ、どこで、星華は俺の性格に気付いたんだ?」



そう言って桜の木の下で立ち止まった敬太様は、まっすぐな視線を私に向けた。


それを聞いた私は、



(さすが腐ってもエセ王子、絵になるよなぁ……)



なんて思いながら。



「そ、それは、ですね……」



取り繕った笑顔の下でダラダラと冷や汗をかいていた。