婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。





(敬太様に全く興味の無い様子だった星華ちゃんが、わざわざメールを打ってこちらから情報を引き出そうとしてる。しかも、『いつどこでその現場は目撃できますか』、と来たもんだ)



ほぼ間違いなく、星華ちゃんは、今回の噂を信じたうえで証拠写真を撮ろうとしているんだろう。


その写真をどう使うのかは分からないけれど、敬太様のスキャンダルを聞いても全くの無関心、それどころか喜んですら見せたところを見るに、婚約破棄を考えていてもおかしくはない。



(さしずめ、


『二人の恋路の邪魔なんてできません。善は急げともいいますし、ここはさっさと婚約を破棄してしまいましょう!そしてお幸せになってください!』


って感じかな……)



……なんか、あり得そうなんだよねぇ。星華ちゃんも星華ちゃんでお嬢様らしいっていうか、変なところ純真で抜けてる感じするし。


軽い気持ちで行った作戦だったはずなのに、ずいぶんと大事になりそうな予感がして私は思わず大きなため息をついた。


しかし、今は頭を抱えてる場合ではない。そう考えた私は、二人に星華ちゃんから届いたメールを見せて自分の考えを述べた。


曰く、これもしかしたら婚約破棄までいくんじゃないの、と。


――しかし、そんな私の考えにNOを唱える者が現れた。


それはもちろん、



「違う、違うよ真奈ちゃんっ!むしろ、これこそが『星華ちゃんがやっぱり敬太君を気になってる』っていう証拠だよ!!」



天然にしてアホの子、真凛である。