「真奈さん。申し訳ありませんが、一つ頼まれてくれませんこと?」
「うん。分かってるよ、この噂の真偽を確かめて欲しいってことでしょ?」
「えぇ、そうですわ」
「それはいいよ。新聞部としても気になるネタだからね。
でも、これだけは覚えていて。
……もしこれが本当だったら、私は容赦なくこれを記事にする」
「えぇ、もちろん構いませんわ」
「え……?」
二つ返事で頷いた私に、真奈さんは拍子抜けしたように首を傾げた。
……まぁ普通なら、
『婚約者が別の女とイチャイチャしている』
なんて外聞の悪い噂はすぐに揉み消そうとするだろう。
しかし、私は七宝院星華。
啓太様と真凛ちゃんの恋の障害となり、二人の恋を成就させるべく裏で頑張る悪役(キューピッド)なのだ!
(……っていうか、これも二人の恋を盛り上げるイベントの一つだしねぇ)
こんな重要なイベント、誰が逃すもんですか――
私は心の中でそう呟きながら、漫画の展開を思い出した。