無事にオリエンテーション合宿も終わり、数日後のお昼休み。


まだまだ不慣れながらも高等学校の生活を満喫していた私は、

学食を食べながら聞かされたその噂話に思わず目を見開いた。



「まぁ、啓太様と真凛さんが恋仲であると――そんな噂があるのですか!?」


「う、うん。そうなんだ……」



聞き返す私に、そう言って眉を寄せるのは情報通の真奈さん。

彼女は原作通り新聞部に入部したらしく、


『新聞部期待のエース(おもにゴシップ方面で)』


などと呼ばれているのだそうだ。


そんな彼女から直接聞かされた情報だし、恐らく間違ってはいないだろう。



「その、まだこれは証拠を掴んでないんだけど、

どうも放課後に空き教室で二人っきりの時間を過ごしているらしくて……」


「素晴らしいですわ!」


「西山くんと西園寺さん仲良かったし、ショックだとは思うけど……

って、えぇぇ!?なんかとっても喜んでる!?」


「そ、そんな事ありませんわよ?」



私は小躍りしそうになるのをこらえつつ、手に持っていた扇子でにやけた口元を慌てて隠した。


いかんいかん、ここで私が喜んだら色々とマズい事になる!


私は仕切りなおすように咳払いをすると、真奈さんの方へ向き直った。