ぐっと、唇を噛んだ。


一捻り、その言葉は私にとって耳障りな言葉だった。

一捻り出来る立ち位置にいる椎が、少し遠く感じた。


「夢夏」


椎は私の顎を掬うと、少しだけ目線を合わせ、口角を上げた。


「親の力など、ただの飾りだ。
お前らは、俺を誰だと思っている」


そういうと、私の噛んでいた唇の部分を指で撫でた。


「血、出てるぞ」

「大丈夫「じゃねぇくせに何を言ってんだ」」


ぐらり。

揺れた私の思考。


親の力など、飾りだと。
そう言った椎。


あぁ、上に立つ人間は、こういう人だと思った。


「あの、ねー…?」

「ん?」


言いそうになる。

思わず。


「私っ、ね……」

「あぁ」

「本当は………っ」


ぎゅう、と心臓が締まる。


陵の闇に足を踏み入れたのに。


今更なにを怖がるの、?


「お父さ…っ、はぁっ、白虎……のっ…」

「夢夏?!」

「みんなをっ、守れ、ないかもっ、知れないの…ッ!」


踏み込んで、ごめんなさい。


「私からッ……離れたい…?
ハッ、今なら、間に合う…からっ!はぁっ、はぁっ…ッ!」

「離れたいワケねぇだろ!」

「椎!保健室に運べ!夢夏が危険だ、このままじゃ!」