-華鈴side-


「行くぞ」



手を伸ばし、あの子の手を取る椎。
私にも見せたことがない瞳で。

一方のあの子は今までにないくらい顔を赤くし、耳なんて真っ赤だった。

指先まで赤かった。


「悪いな。華鈴」

「いいんだよ、しーちゃん」


撫でられるのは、頭じゃなくて。

肩をポンと叩かれるだけ。


スッと襖が閉まる。


「馬鹿しーちゃん……」

「やっぱりなぁ〜。お前やっぱり椎のこと好きだろ」

「ヒッ!!! 奏ちゃん!?」

「ちゃん付けるな気持ち悪い」

「奏夛!!!「うるせえ」


おでこを平手でペチンと打ってくる。
この人はなにかと華鈴が嫌いらしい。


「お前椎が好きなくせに、錦戸と付き合うとか悪女過ぎねえか」

「……なにも知らないくせに。華鈴は椎が好きなんじゃないの」

「見てりゃあわかるっつーの」

「知ったかぶらないでよ!!」


奏夛の手を振り払う。

この人は何も知らない。


「悪女って………奏夛だって、好きでもない相手とシてるじゃない!!」

「……それが?」