「余裕、無くなるようなこと、今してやろうか?」
「っ〜〜〜!余裕なんてないです‼︎‼︎」
「………へぇ」
ふっと口角を上げて、急に離れる椎。なっ、なんなのだろうか本当に。
というか、へぇって、絶対信じてないよね?!実際、今だって心臓が跳ねてるし、余裕なんてないし!
いやに火照る顔を手で扇ぐ。
それでも収まらない熱さに嫌気がさす。
逃げるように時計を見ると、私が起きてから一時間近く経っていた。
それでも、まだリビングには私と椎との、二人だだった。
なんか、珍しいな………。
「こ、こほん。え、えっと。椎。」
「ん?…なんだ?」
そんなに優しい声をされると、ただ、なんとなく呼びました。なんて言えないし、言いたくない……。
「う、う、海に行きたいです、ね」
私がそう言い終えると、椎はすっと目を細めてから、形の良い唇を薄く開いたかと思いきや。
急に立ち上がり、携帯を取り出すと、何処かへ電話をしていた。
これから数時間後、私は椎にあんなことを言うんでは無かったと後悔することを知るよしも無かった。