奏夛 side



「綾ー、お前髪色暗くなってねぇか?」

「どうでも良いだろ」

「良くねぇよ。よし、今日染めてやるよ」

「さんきゅ」




リビングには、珍しく顔を曇らせた椎に、ソファーに寝転ぶ綾。

携帯を弄る香月に、お菓子を食べる真帆。


でもただ1人、俺らの姫がいねぇ。

夜飯も食わずに、風呂に入ってから自室に籠りっきりだ。




「いねぇだけで、こんな静まるんだな」

「いろいろあんだろー?」



“寂しい”なんて絶対言わない。


それは、あいつがいらないとかでは無くて。



「夢ちゃん考えてるんだよね。未来のコト」



お菓子を食べるのをやめ、静かに呟いた真帆。

表情は心なしか怒っている。


唇を尖らせ、頬をぷくっと膨らませて。

おいおい、それが男子高生のやる表情かよ~。