でもそれは、まだ幸せだったのかも知れない。


ある日──────


「お母さん、ただいま」


お母様、と言うと、お母さんに怒られてしまうから、口調は変わらないけれど、出来る限り思い出さないようにしている私。


「あ、貴方?!不法侵入よ!」

「なにを言ってるんだ!!こんなボロいアパートに住みやがって!」

「いやぁあ!!触らないで!!
もう無理なのよ!」


男女のヒステリックな声が響く。

この声はっ・・・・・・・・・・・・


「夢夏・・・・・夢夏はどうしたんだよ!!せめて夢夏はよこせ!」

「夢夏は私の子よ!!!」

「何を言う。あの髪色は西園寺の髪色を受け継いだんだ!!」

「貴方があんな髪色にするから・・・・夢夏が縛られるのよ!!」

「・・・わかった・・・・・・・・手を引く変わりに、もう関わるな!!
勝手にしやがれ!」

「夢夏には絶対会わないで!!



これが。


西園寺夢夏から、望月夢夏に変わった日だった。


お父様がいなくなったのを確認すると、私は中に入った。


「お母さん・・・・・・・・・・・」

「夢夏・・・・」