「…ちょっと…、
誠人くんの大学に行ってくるね」
「……午後からの講義はなかったよね。
私たちも行こうか、玲子」
「そうね。3人で向かいましょ」
そこまで遠いわけじゃないから
電車で30分ぐらいたって、
名門中の名門の国立東京大学の前に来てみると、
すごい人がいっぱいで、
「やだー、あの人カッコいい!」
「今私たちのこと見てたよね!絶対気がある!」
女大育ちの二人には
男は珍しいものしかないみたいで、
おもしろくて心の中では笑っていたの。
「人に聞きたいけど、
部外者だって思われちゃう」
「どうしようかな、ここは…、」
「えっいや…」
5人ぐらいの男の子の中に私は押されて、
「な、何…どうかしたかな…」
「…可愛い…君、どこの学部?
番号おしえてよ」
合コンと違って
一人でこんなに多くの人を相手するのは、
トラウマのことを思い出されそうで、
早く誠人くんに会いたくて、
「あの、医学部に友達がいるんです。
でもまよちゃって…」
「そっか、俺たちが案内してあげる」
この場をしのぐのになんとか耐えるしかないか…。

