―梨々香-
住宅街を抜け繁華街に入る。
あと10分くらい。
行きはお菓子をあげて喜ぶみんなの顔を想像してルンルンで通った道。同じ道なのに、帰り道の今はすごく気分がドンヨリしている。
考えるのは、
彼のこと。
俯きながら、
空っぽになった手をぶらぶらとさせ
賑やかな繁華街を歩く。
「ねぇねぇ。寒いよねー。」
声がして振り向くと
横に高校生とみられる
制服を着崩した腰パンの男が話しかけてきた。
スルー。
「結構、可愛いね。てか、かなり可愛いよ。」
今度は前方にまわった
もう一人のチャラそうな制服を着た男が
話しかけてきた。
おそらく2人は仲間なのだろう。

