形のいい唇が開く。

「今日からこのクラスでお世話になります、松田桃護と申します。

担当は数学です。

実習生ゆえにつたないところはありますが、よろしくお願いします」

よく通るテナーの声で自己紹介した彼に、このクラスの生徒たちのハートはつかまれた。

このハートドロボー!

彼は何が起こったのかわからないと言うように首を傾げている。

くーっ、自分の美貌に無自覚なのは今も昔も相も変わらずか。

って、担任のハートもガッチリキャッチか!

あの人、結婚してるうえに子供も2人いるんですけど!?

相も変わらずな魔性の男だ…。

心の中でツッコミながら、あたしはじーっと彼に視線を送り続けていた。