「祐介さん。何も、大学院まで行く必要はないんじゃないかしら。貴方には、早く会社の経営に関わって欲しいわ」



母親の、ため息混じりの言葉に、俺は穏やかに笑ってみせる。


「もう少しだけ、勉強したいんだ。大学で経済は勉強したけど、経営者になるには、人を纏めるための心理学も、もっと知っておいて、損はないって思ってさ。それに、長くいるほうが、あの大学の人脈も拡がるしね」




「まあ、あなたがどうしても、というなら、仕方ないけど」


母親が、諦めたように、話を打ち切る。


本音を言えば、働きたくないだけだ。



陸コーポレーションの後継者として、将来は決められている。



母親が、先代から受け継ぎ、大きくしてきた会社。



本当は。



会社を継ぎたくなんか、ない。