林くんが、ボクの前にしゃがみこむ。


「だから俺も、高校卒業したら働くつもりだけどさ。けど、おまえは悪くないってわかっててもさ。大したことないじゃん、って。おまえが走っているとこみて、大した怪我でもなかったくせに、って、思いたかったんだよな。
おまえが走っているの、見るのも好きだったしさ」


林くん。
だから、あんなにボクを走らせたかったんだ。


「まぁ、おまえが困った顔するのも、見てて飽きなかったんだけどさ」


林くんの手が、ボクの肩を軽くたたく。
笑っている林くんの前で、ボクはまた、泣きたくなってる。

どうして。
みんなこんなボクに、優しいんだろう。
ボクは結局、誰のことも幸せにしてあげられないのに。