腕の中で、堀井さんが、もがく。

唇を思い切りかまれて、思わず、手を離した。

俺を突き飛ばすように、堀井さんが、部屋の隅に逃げる。


「……つっ」


手の甲で、唇を拭った。

血が、手の甲につく。


「ひどいな」


言いかけて、顔を上げ、俺はその場に凍りついた。

堀井さんが、座り込んで泣きじゃくっている。


「堀井、さん?」


ようやく、俺は我に返った。

いったい、何をやっているんだ。

傷つけるために、キスをした。

心からマコトのことを心配してくれている、マコトの大切な、友達に。