「あ、そうだ」



陸さんが、ポケットから赤い携帯電話を出しながら、言う。


「マコトくん、よかったらメアド交換しない?」



「あ、でも」



「マコトはケータイ持ってねぇよ。なあ?」



吉田が、どこか勝ち誇ったような言い方をする。



そんなこと、大きな声で言わないで欲しい。



陸さんが、ちょっと目を見開く。



「そうなんだ?」



「ごめんなさい」



携帯電話なんて、なくても困らん。
そんなものは、一人前になってから、自分で稼いで買うもんだ。



お父さんはそう言って、ボクにケータイを持たせてくれない。



でも、その通りなんだよね。



今まで、出かけるのは家と学校の往復位だったし、電話をかける用事なんて、そんなにないし。



欲しいな、とは思うけど。