彼女はそれなら知美と友人でい続けると口にし、知美が何を言っても聞く耳を持たなかった。

「じゃあね」

 いつも知美と県道沿いの信号の前で別れる。

 だが、家に帰ろうとした知美の足は自ずと止まる。そして、近くの民家の塀の陰に身を潜ませた。

「どうかしたの?」

 別れたはずの真美が、知美の様子がおかしいのに気づいたのか、知美の傍にやってくる。

 彼女は前方に立つ人を見て、ああと言葉を漏らす。

「前田君のお母さんか。少し遠回りになるけど、こっちから帰ろう」

 彼女は前田の言っていた話を知っていたのか、知美の手を引くと、歩き出した。

 彼女はまだ道も十分に分からない知美を家の傍まで送ってくれた。